東京高等裁判所 昭和28年(う)3892号 判決
しかし原判決の挙示引用に係る標目の各証拠を綜合すれば原判示第一の事実は優にこれを認めるに足り事実誤認の疑はない。論旨は被告人沖崎の所為はむしろ原判示河崎義明の業務上横領罪の共犯をもつて論ずべきであると主張するけれども、本件訴訟記録並びに原審及び当審において取り調べた証拠に現われている一切の事実を精査すれば、被告人沖崎は前記河崎から同人の業務上占有に係る原判示漁網用綿糸を不法に売却し横領しようとする決意を告げられその売込の斡旋方を依頼せられたにとどまること明らかであり、同人の業務上横領の所為について共謀したものとは認められない。そして前記河崎が被告人沖崎にその業務上占有に係る原判示物件を不法に売却処分しようとする決意を告げ且つその売却の斡旋を依頼した行為は、すなわち原判示物件を不法に領得しようとする意思を外部に表現した行為と認むべきであるから、これによつて横領行為は完成し該物件は同時に賍物たる性質を具有するに至つたものと解すべく、したがつて被告人沖崎が右河崎の依頼を承諾しその事情を知りながらこれを原判示高野登に対し売却の周旋をした所為に対し原審が賍物牙保罪をもつて問擬していることは固より相当であり、事実誤認の違法もなく、理由不備、理由のくいちがいの違法もないから論旨はいずれも理由がない。
(裁判長判事 中村光三 判事 脇田忠 判事 鈴木重光)